0131222毎日新聞より

 

2013この3

 

持田 叙子(日本近代文学研究者)

@    ゆうじょこう  村田喜代子著(新潮社・ 1890円)

A    首里城への坂道 与那原恵著(筑摩書房・3045円)

B    夕凪の島━八重山歴史文化誌 大田静男著(みすず書房・3780円)

 

直視せよ、日本は欧米とおなじ平地大国ではなく、その実態は何百の島々に他ならぬとする柳田国男のことばに胸ゆさぶられた今年。海と島をものがたる三つの美しい作品に出会った。こころに濃い影が残る。

@              は火山の孤島から熊本の遊郭に売られてきた、人魚姫のような少女の物語。最近の著者は火山、海、太陽に執着し、列島のいのちの胎動にふれる気迫がすさまじい。

A              鎌倉芳太郎は大正時代に沖縄へ渡り、琉球芸術の美にうたれ、首里城や紅型を潰滅から救った男。その評伝。鎌倉を軸としながらも、彼に助力をおしまず郷土の文化復興に情熱を傾けた沖縄の魅力的な人々につよく鮮やかな光が当てられるのが画期的。

B              は石垣島より発信される滋味豊かなエッセイ。自然の光と色に酔い、海からの神を尊敬する想いは郷土の平和の希求につながる。国家無用の、島の文化の宣言でもある。

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