20130129讀賣新聞より
東日本大震災から二年近くが過ぎ、文芸誌では毎月のように、あの災害を踏まえた作品を見かける。今月は、宮城・石巻生まれの逸見庸さん(68)が、震災後の自身の?い心境を映した久々の小説「青い花」(スバル)を発表した。
(中略)
いとうさいこうさん(51)の16年ぶりの中編小説「創造ラジオ」(文芸春号)はもっと真っすぐに、震災で生き残った側の人間のあり方を扱った。
(中略)
一方、連載では村田喜代子さん(67)が、「新潮」11年2月号から始めた「遊女考」を完結させた。明治の世、鹿児島の離島から熊本の遊郭に売られた15歳の少女の話だ。日々の出来事を描く中に、彼女が方言でつづる作文が差し挟まれ、物語の襞を深める。
娼妓は契約で働く自由な女であり、仕事や家事に追われる母親こそ牛馬と同じだと教わった少女は反発して書く。
<あたいの おかさんは 海で 貝をとり イオ(魚)をとります
あにょ(兄)と あんにゃ(姉)と あたいと おとっつ(弟) いもっじょ(妹)を 生みました(略)
そんな おかさんが うし うまと同じなら
うしも うまも まこて(まことに) てーした(たいした)もんだと おもいます>
健康な心を持つ少女が日陰者にされ、それでも心の太陽を失わず生きた時代がある。
(後略)
(文化部 待田晋哉)