20121209産経新聞より

読書

 

偏愛ムラタ美術館 発掘編   村田喜代子著

 

たまたまめくった雑誌や偶然に入った飲食店の壁で出会った一枚の絵。絵好きの著者はそうして巡り合った絵に対して情熱を込めて思いを書いた。

三十六歳で早世した松本俊介について[もう死後六十四年という歳月が流れている。だが松本俊介は永遠に青年だ]と的確にとらえる。

たった二十年で人生を閉じた関根正二、九十七歳で静かに没した水越松南・・・。 著者はあとがきにこう書いている。[私は言葉しか持たないので、それでこの不自由な言葉という装置でもって、自由な絵画というめくるめく世界を、記すのである]と。

作家によって紡がれた言葉によって、画家の絵が眼前に鮮やかに広がってくる。

(平凡社・2100円)

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