毎日新聞2,007428

 

日常が非日常に突然変わる作風

紫綬褒章 村田喜代子さん62歳・作家

 

「還暦過ぎの人生の分岐点で授かることになり、自分がやってきた仕事を再確認できるよい機会になりました」

故郷の福岡県に住み続け、「生と死」や「老い」を題材に豊穣な文学世界を紡いできた。日常に避け目が入り、非日常が突然現れる作風は「村田ワールド」と呼ばれる。87年に「鍋の中」で芥川賞を受賞。その後も女流文学賞、平林たい子賞、紫式部文学賞、川端康成文学賞、芸術選奨文部大臣賞など数々の賞に輝いた。初期は「短編の名手」と称されたが、近年は長編でも実力を発揮するなど活躍の場を広げている。

今、「現代人にとって望郷とはどういうものか」をテーマにした小説を手がけている。「作家は虚業のようで引け目を感じていたけれど、最近になって実質的な仕事だと思えるようになった」と心境の変化を語る。

年を取ることは作家にとってプラスと考えている。「経験が増えることでイメージが膨らむ。泳ぎにたとえれば、波打ち際から段々深みに入る感じ。深くなるほど面白くなる。小説を書くには、もってこいの時期を迎えました」。同県中間市在住。

【渡辺亮一、写真も】

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