2007年4月28日朝日新聞から

「年を取ること」と向き合う  小説家 村田喜代子さん

 

 

「最初はいたずら電話だと思った」

先月の受賞の意思確認の電話を振り返る。褒賞なんてまだ若い。作品も功績もまだ少ないと思ったのだ。電話を掛け直したら文化庁が出てびっくり。「驚いたけど、これまでの仕事への記念として、ありがたくいただきます」

87年「鍋の中」で芥川賞、08年「望潮」で川端康成文学賞。00年から01年には朝日新聞で「人が見たら蛙に化れ」を連載した。

山口県下関市の梅光学院大学の客員教授。海峡をへだてた福岡県中間市の自宅から通う。若い学生と向き合うが、作品は「年を取っていく」ことと向き合うものに。

「以前は自由に使えていた体に、今は負荷がかかるようになった。体って何か、死んでいくってどのようなものかを書きたい」

最新作は「新潮」6月号から始める「故郷のわが家 ラスベガスの男」だ。世界が縮まり、故郷やノスタルジーをなくしていく現代人にとっての望郷の意味を考え直す。

「私の興味は、身体論と望郷論に集約していくと思っています」

                       (編集委員・福島建治)

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